久しぶりに鳥肌が立つ体験だった。

これまでバング&オルフセンのフラッグシップ・スピーカーとして日常的に触れてきたBeoLab 5が過去に聴いたことがない程、 圧倒的な情報量、透明感をもってリアルなサウンドステージを描き出している。

CDの登場から26年が経ち、世界中のオーディオブランドが様々な手法で高品位なCD再生を追い求めてきた。ただ、それらは全てCDソフトをリアルタイムドライブでピックアップするものに変わりはない。CD再生で必要なデジタル信号をアナログ音声に変換するという作業を『変換=翻訳』に例えてみれば、それは難易度の高い同時通訳をランニングしながら行うようなもので、そんな過酷な状況下では、どんな優秀な翻訳家でも内容に漏れも出れば、端折りたくもなるだろう。このような旧来の手法では、陸上選手並みの体力をもった国際翻訳家を探すようなもので、これではコストも手間も掛かるはずである。

それならば 翻訳内容を静かな書斎で何度でも調べ尽くして、後日、快適な環境で改めて伝えることが出来れば、パーフェクトな仕事を比較的容易に実現する事が出来る・・・KLIMAX DSの概念としてはこのような内容になると思う。

心情的にはパソコンのドライブにCDソフトをセットしてリッピングする(CDのデータをそものままPCに取り込む)行為自体が、とても高品位なプレイバックなんて出来そうもない印象を抱いてしまうのだが、よくよく考えてみればCDに閉じ込められているのはデジタルデータであり、音溝をカートリッジでトレースするアナログ(レコード)とは根本的に違う物であるということ。
要はソフトに込められたデジタルデータをどこまで正確に抽出できるかという事だけが重要で、アナログ(レコード)のようにカートリッジや リードワイヤーの線材、ターンテーブルや周辺機器の付帯振動など様々な外的要因を伴って再生音として表現されるものではないので、リッピングという手法がとても正しく理想的であることに気付かされる。

気になっていたCDのリッピング作業自体も、お気に入りの音楽を最上質のコンディションで愉しめる喜びからすれば ストレスどころか手間をかけるほどに愛着が沸いてくる趣向品の手入れにも似た、何とも幸せな時間に感じてしまう。最新のレコーディングはもちろんなのだが、驚かされるのは1950〜60年代のステレオ録音の開始前後の頃の再生が素晴らしく良い。 抒情的なマイルス・デイビスのマラソン・セッションや鬼気迫るマリア・カラスのステージなどを聴いていると完全に時間を忘れて聴き込んでしまう。

時間を忘れ去るほどの音楽体験を皆様にも 是非お試し頂きたい。

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